「維新府政が保健所リストラ」はデマかどうか検証しました。
みなさんこんにちは。大石あきこです。
(*^^*)
本日は上のタイトルのとおり、「維新府政が保健所・衛生研所をリストラしたというのはデマ!」というデマについてお送りしたいと思います。
(簡単にいうと「維新府政が保健所リストラしたのは事実」)
今後の大阪や日本の公衆衛生政策を考えていくのにとても大切なこ
となので、ぜひお読みください。
え?そもそもなんのこと、と思われるかたも多いと思いますので、まずは経緯をば・・・
以下の記事は大阪市の保健所がパンクしているという報道です。(2020年5月10日毎日新聞)
このように、大阪でも全国でも、新型コロナウィルス対応で、追跡調査やPCR検査をするのかどうかの判断をになってきた保健所はパンク状態になっています。
この国では、これまで、20年単位で、病院や保健所や衛生研究所など、公衆衛生にかかせない機関を、「節約」対象、「税金のムダ」と捉え、マスコミも一緒になって「行政改革」のターゲットにしてきました。
もちろん「保健所だけ」というわけでもなく、基本的に歴代政権、歴代府政において「職員数削減」は成果の指標として重視されてきた。というのが事実です。
大阪では、職員数削減が「成果」になってきたのは、こんな感じ↓ 「全国トップレベルのスリムな組織体制」つって。
ちなみに、あまりにも減らしすぎて、時間外勤務と病気休職の増加を招き、松井知事の時代に限界を迎えたとして、数を減らすのをやめて、「職員管理目標」の数値が変更されました。
(「じゃあ今が最適なサイズなのね」ってシンプルに思ってしまうかもしれませんが、民間、公務員を問わず、今、たくさんの人が病気でつぶされてしまっていて、その一人一人の人生や家族の苦しみを想像してくれたらいいなと思ってます。)
ちょっと話はもどりまして、
そして、このような職員リストラが極限化した中で、コロナ危機を迎えたときに、上に書いたように保健所がパンクして、住民がPCR検査を受けたいのに、橋下徹でもなきゃ滅多にPCR検査なんか受けさせてもらえない!(このことによって橋下さんは若い子に「平熱パニックおじさん」とか「平パニ」とか呼ばれている)という事態が続いています。
そういう住民の「なんなのこれは!」という怒りを背景に、為政者が「誰が保健所をリストラしたのか」っていう責任を問われてきているというわけです。
先日、文春は維新の不都合な真実として、「病院統合・保健所3割減」の砲を出しました。
維新府議や市議は、それに反論。
3割かどうかはともかく、橋下徹さんは、太田房江・元大阪府知事時代のことを「放漫経営」だなどとディスっていたり、お互いがリストラ競ってたんだから、両者とも、素直に間違いは認めたらどうや、そのほうが今後の改善につながるやろ?と思うのですが。
なのに。
太田房江・元大阪府知事と、吉村・大阪府知事が、リストラによる保健所パンクの責任を押し付け合っている状況。
大阪府は、カジノ・万博・都構想以外の分野で、激しくリストラを進めてきました。人員だけでなく、予算も。毎年のように「●%シーリング」として、法順守できないレベルであっても、削減してきました。
私のいた環境分野でも、例えば大気汚染や騒音の測定機器について、法定のメンテナンス基準が保てないですよ、って説明しても、予算のシーリングは絶対だから、ということで、メンテナンス水準を下げるか、受託業者さんにツケを押し付けるか。忖度するか、上司の指示かで、やらされてきました。
また、保健所と切り離せない機関である地方衛生研究所を「単純検査だ」「ダウンサイジングだ」「外注化・独立採算・もうかる業務に転換だ」なんて暴論も、内部から、さんざん見てきたので、保健所だけを大事にして人員増やす、ってことはあり得ないのはわかります。
今回、真実を数字で明らかにすべく、ファクトチェックしてみました。
まずは維新の府議さんらが「正しい」と主張する「大阪府内保健所の職員数は増えているんだ」の根拠にしているグラフを見てみましょう。
ふむふむ、このグラフだと確かに、保健所の職員数が増えていますね。
うーん、でも、豊中市や枚方市が中核市移行(=大阪府が設けていた保健所を、中核市となったときからその市が設けることになる)したら職員が増えている、ここに何か、違和感を感じますね。
掘り下げて、このグラフに使われたという、元の数字を見ていきます。
が、その前に。
「維新・大阪府政、大阪市政での保健所リストラ」の有無が問題になっているのに、このグラフだと、堺市やその他の中核市が採用している保健所の職員が含まれてしまっていますので、維新府政・市政の検証になりません。
だからその時点でアウトです。
(後述に、大阪府政と大阪市政でのグラフをお見せします。)
その上で、このグラフにはさらなる「盛り」が見られるので、それをお伝えしていきます。
この数字をそのままグラフにして「職員増えてる」とか言っちゃいけないよ?デマになっちゃうよ?
の理由は、普通は、わかりにくいと思うので、以下、模式図を描いてみました。
簡単にいうと、府保健所50+市保健センター50=保健所100と単純に足してしまうと、中核市移行のたびに計算上だけ職員が増えてしまう意味のないグラフになってしまいます。
だから、「保健所としての機能が強化されたかどうか」を評価するためには、この50は足したらいけません。
むしろもともと130人体制(図の80+50)でやっていた府保健所機能が、府80人と市50人に分割されることによるスケールデメリットとか、専門性を確保できない問題を注意深く見るべき。(文末のまとめ参照)
もう少し説明しますと、
世の中に「保健所っぽいもの」とイメージされている機関には、「保健所」と「保健センター」が分かれて存在しています。(二重行政ちゃいますからね。笑)
保健所は「感染症対策・母子保健・精神保健」などをやっていて、保健センターは予防接種や検診をしています。住民さんにとっては、保健センターのほうが普段は身近だと思います。
もちろん、本来、これらの保健所機能というのは全体として力を発揮するものだから、別に、常に分けて集計せえ、という意味は全くなく、全体としての力を見るための評価というのはそれとして必要だと思っています。
今回の維新さんがアピールしていたグラフの問題は、「維新はリストラしていない、むしろ職員は増えた」なる、ウソで過去のやってきたことを正当化するという文脈だから問題です。
統計処理というのは割り切ってやるものなので、元データの統計手法には、問題はありません。
問題なのは、それを使って間違った事実を表現する場合です。意図的だったら余計に問題です。
さて、この真実を、維新さんがアピールしていたグラフに再度あてはめてみましょう。
そしたらグラフは、盛り部分によりプラスに見せていた、ということがわかりました。
一言でいうとグラフは「デマ」だということです。
それで、このグラフはデマだとわかったとして、じゃあ、大阪府の保健所機能は職員数でみたとき、削減されてきたのかどうなのかをグラフにします。
上で言ったように、保健所と市の保健センターの機能は有機的なので、中核市の保健所の機能を、人員でふりわけるのは困難です。
なので中核市を最初から除いた、保健所の常勤職員数のグラフを作成しました。
これです↓
はい。維新・大阪府政での保健所リストラは6%でした。
(文春の”3割”は文春に聞いてください、伝えたいことがあるのかもしれません。私はそこまで検証しません。)
ちなみに維新・大阪市政での保健所リストラは5%でした。
以下↓
以上、「維新府政が保健所・衛生研究所をリストラしたというのはデマ!」はデマという結論でした。
じゃあ、そのうえで、保健所をどないしたいのか?について以下まとめておきます。
結論:ファクトとしては維新府政・市政で保健所5-6%リストラ。
重要なこと:本来、保健所運営は、どうあるべきか?
・保健所の中核市移行は、地域密着と言われるが、それぞれで、専門職を配置し、検査機能も持たないといけない
・でも、現実、スケールメリットがなく、放射線技師や検査技師、狂犬病予防技術員などの専門職を中核市単独では配置できていないし、検査機能も貧弱。リストラになっている。
・大阪市廃止=特別区設置でも、特別区ごとに保健所設置というけど、機能は失われる。
結論は以上です。
なお、ファクトチェックは、やみくもにやれるものではなくて、「あれ、これっておかしいぞ」って経験と嗅覚で感じることが大事だと思っています。
今回でいうと中核市移行の際に数十人の単位で増えるのはおかしい、とか。
そして、なぜデマを言ったんだろうという文脈や背景が大事ですね。
歴史認識と同じで「唱えている人たちが誰の利益を代弁しているのか」が大事だと思っています。
グローバルビジネスやカジノ開発のために「身を切る改革」で財源をねん出するとして、公務員をあらゆる分野から減らしてきた人たちが、ときに、減らした数を「成果」だと誇り、ときに「減らしていない、増やした」という。
では、「維新はいつも正しい」というデマを広めて、得をするのは誰なの?
コロナ禍でも、今なお、カジノも、都構想も進めていきたいグローバルビジネスで儲けれる人たちじゃないでしょうか?
インバウンド需要の回復見込がない中で、それでも突き進むのは、非常に危険なことです。
府民をコロナから守るためには、
まずは、この20年、維新も含めて、大阪府政・市政そして国政が、公衆衛生をリストラしてきた事実を認めることからしかはじまりません。
それによって、府民がコロナの検査を受けられなかったり、しかるべき医療処置をしてもらえないリスクが高まっていることをちゃんと見据えましょう。
そして、反省すべきは反省し、十分な状況改善を、地方と国のトップが責任をもって指し示すべきです。そうでないならコロナ禍はいつまでたっても人災のままです。
日本においてコロナは「見えない敵」ではありません。人災です。公衆衛生をリストラして「行革」だと叫んできた国の人災です。
カジノ、都構想をそれでも進めようとしている大阪府と大阪市の姿勢を見ると、このような反省や状況改善をしないまま突き進む可能性が高いです。
そうであれば、住民から、「吉村都構想やめとけ」「吉村カジノやめとけ」の声を上げていくときではないでしょうか。一緒にやりましょう。