安倍政権が8年目を迎えた。通算在職日数が歴代最長となる一方で、おごりや緩みの弊害がますます強まっている。「安倍1強」政治の下で、議会制民主主義の弱体化が止まらない。

 先月閉幕した臨時国会は象徴的だった。「政治とカネ」を巡る2閣僚の辞任に続き、公的行事「桜を見る会」に対する安倍晋三首相の私物化疑惑が噴出。大学入学共通テストに関しては英語民間検定試験と国数記述式問題の導入が結局見送られ、高校生が混乱した。だが、首相をはじめ誰も責任を取らない。説明責任もおざなりだ。

 これほど重大な不祥事や失政が相次いでも、与党内で政権への責任を問う声が広がらないのは、政治の怠慢だと言わざるを得ない。誠実で公正な政治を求める有権者の負託に応えていない。政府を追及する野党も力不足を一層重く受け止める必要がある。国民の政治離れに歯止めをかけるために、国会は「機能不全」から早く脱却しなければならない。

 桜を見る会では首相の地元の有権者が大勢招かれていた。公私混同の批判は免れず、会の前夜に開いた夕食会については公選法などに違反する可能性も指摘されている。招待者名簿の不自然な廃棄や、預託商法が問題視された「ジャパンライフ」元会長が招待されるなど疑惑の根は広がっている。

 にもかかわらず、与党は早々に幕引きを狙い、野党が求める首相出席の予算委員会の集中審議を拒否し、会期延長も応じなかった。首相は答弁しても核心部分には触れずじまい。曖昧な説明で乗り切ろうとするのは森友・加計学園問題でも繰り返された。民主主義の根幹を支える公文書を軽んじる体質も変わっていない。

 さらに昨年末、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件も発覚した。政権の目玉政策を担当していた当時の副大臣が賄賂を受け取った疑いがある。首相の任命責任だけでなく、多くの懸念を残したままIRを推し進めてきた政府の姿勢も問われている。しかし、疑惑調査に乗り出すことなく、野党が求める副大臣時代の出張や面会記録の提出にも応じていない。

 国会軽視が極まる背景には物言わぬ与党はもちろんだが、多弱状態の野党の責任もある。ここにきて立憲民主党と国民民主党の合流協議が大詰めを迎えているが、政治に緊張感を取り戻すには強い野党の存在は欠かせない。態勢の立て直しへ一丸となれるのかどうか注目したい。

 内政、外交ともに課題は山積している。疑惑が出るたびに政府、与党が説明責任や真相解明に後ろ向きでは、追及に多くの時間が費やされ、重要政策の議論も深まらない。深刻な弊害をこれ以上、見過ごすことはできない。政治の劣化は国民にしわ寄せを招くと議員一人一人が肝に銘じ、自らの権能を果たすべきだ。

愛媛新聞 2020年1月6日(月)
https://www.ehime-np.co.jp/article/news202001060018