【ニュース解説】なぜ#嫌韓 ネトウヨは高齢者に多いのか? 毎日新聞外信部長が解説 ★5

◆ なぜ嫌韓は高齢者に多いのだろうか 

あるパーティーで、60代後半だと思われる初対面の男性に自己紹介したところ、「朝鮮半島が専門だというから聞くんだけど」と切り出されました。 
「あー、きたきた」という感じです。 
男性は「韓国はなんだ、あれ? やっぱりおかしいな」と続けました。 

議論をする場ではないし、そもそも生産的な話にはならないのですが、単純に同調するわけにもいきません。 
仕方ないので、冷戦終結からの30年間に日韓関係は根本的に変わってきていること、お互いが変化した関係に適応できずにいるため政治的な摩擦が激化していることなどを説明したのですが、あまり納得してはもらえませんでした 

◇ 世代差の激しい韓国への親近感 

日本政府が毎年行っている「外交に関する世論調査」というものがあります。 
米国や中国、韓国について「親しみを感じるか」などと聞く調査です。 

昨年末に発表された調査結果では、韓国に親しみを感じるという回答は39.4%でした。 
2012年の李明博大統領(当時)による島根県竹島上陸を契機とした日韓関係悪化を受けて14年に31.5%まで落ち込んだものが、少しずつ回復しているという状況です。 
ただ6割を超えていた09~11年とは比べるべくもありません。 

調査結果の詳細なデータを見ていると気がつくことがあります。 
「韓国に親しみを感じる」という回答が18~29歳では57.4%なのに、70歳以上では28.1%なのです。 

まさにダブルスコア。他の年代も見ると、30代51%、40代42.3%、50代42.7%、60代31.3%でした。 
どこで線を引くべきかは難しいところですが、高年齢層の方が韓国に対して厳しいというのは一目瞭然でしょう。 

嫌韓は高齢者に多い」というのは専門家たちが話題にしていたことなのですが、それを裏付けるような数字です。 
ヘイトスピーチ対策に取り組んでいる神原元・弁護士は「ヘイトスピーチは若者が憂さばらしでやっているというのは勘違いだ。むしろ、ある程度の社会的地位を持つ50代以上というケースが多い」と指摘しています。 
直接的なヘイトスピーチというほどではないものの、冒頭に紹介した男性のケースも同じでしょう。 

◇ 「昔の韓国」イメージが嫌韓を生んでいる? 

では、どうしてなのか。これは、なかなか難しいところです。 
まだまだ検証が必要なのですが、1980年代末から韓国にかかわってきた私の感覚では、「昔の韓国」のイメージが作用しているのではないかと感じています。 
80年代までの日本で韓国に持たれていたイメージは「軍事政権」というネガティブなものでした。 

それに対して90年代後半以降に成人した世代には、K-POPに代表されるような発展した国という明るいイメージしかありません。 
90年代末に慶応大の小此木政夫教授から「最近の学生はソウル五輪以降のイメージしか持っていない。我々の時代とは全く感覚が違う」と聞いたことがあるのですが、まさにそうした違いでしょう。 

そして「昔の韓国」は、経済的にも、政治的にも、日本とは比べものにならない小さく、弱い存在でした。 
それなのに、バブル崩壊後に日本がもたついている間に追いついてきて生意気なことを言うようになった。 

そうした意識が嫌韓につながっているのではないか。 
そう考えるのが自然なように思えます。 
67年生まれの私と同世代だという神原弁護士も、同じような感覚を持っているそうです。 

それ以外にも、さまざまな要因があるのでしょう。 
もう少し取材を続けてみたいと思います。 
毎日新聞外信部長・澤田克己】 

毎日新聞 2019/5/18(土) 7:00 
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190518-00000003-mai-soci